2022年5月17日 (火)
こんにちは(#^.^#)
熊本県熊本市東区桜木にあります歯医者、せき歯科クリニックから事務長です。
コロナの制限も解除された久しぶりのゴールデンウィークでしたね。
皆さんも県外に行かれたり久しぶりに羽を伸ばされた方も多いのではないでしょうか。
そんなゴールデンウィークに入る少し前、悲しいニュースが入ってきました。
北海道の知床半島沖で観光船が沈没して乗員乗客が亡くなられたり行方不明になった事故です。
全国ニュースでも何度も取り上げられていますので皆さんご存知だと思います。
のちの捜査で、観光船を運営していた会社のずさんな安全管理体制が明るみになってきました。
他の観光船会社の船も出ていない漁船も出ていないほど海が荒れているのにもかかわらず、きちんとした連絡手段もなく船底から水が漏れている船で経験の浅い船長によって単独で出航したのです。
経験の浅い船長は海がどんどん荒れて来るにもかかわらず戻る事なくどんどん沖へ強行して行き、最終的にエンジンが動かなくなり沈没してしまいました。
4月と言えど知床の海はまだ海水温5度前後と成人の男性でも5分ぐらいで意識が無くなるほどの温度で、周りにも船は出ていないし荒れた海なので救出も遅れ、発見された人は皆亡くなっていました。未だに14人もの人が行方不明のままです。
私はこのニュースを見ていてひとつ違和感を感じる事があります。
それは、事故当日も手伝いに来ていた元社員や周りの観光船会社の人が『あそこの社長は海に関して素人で、船長も経験が浅い、これは起こるべくして起こった。』と言っている事です。
私ならこう思います。
『被害にあわれた方やご家族には本当に悪い事をした。私にできる事は無かったのだろうか…もっとできる事をしていたらこんなこと起きなかったんじゃないか。本当に申し訳ない…』
何で同じ会社で働いていた人、まわりで危ないと分かってみていた同業者の人は何も行動しなくて『やっぱりな』と言えるのでしょうか?
私にはそこが不思議でなりません。
私はこのせき歯科クリニックで働き出した頃の鮮明な記憶が今でもあります。
ある高校生ぐらいの子供が部活動でぶつかって前歯が抜けてしまって抜けた歯を持って来院しました。
普通のサラリーマンをしていた私が兄に呼ばれてこちらで働き出したばかりだったので何もわからずそのままいつもの受付をしてその患者さんに中に入ってもらいました。
そこであるスタッフが消毒液で患者さんが持って来た抜けた歯を洗おうとしたのです。
それに偶然気付いた院長が『何してるの!!』と怒りました。
そう抜けた歯は決して消毒や水道水で洗ってはいけないのです。
歯の根には歯根膜という組織があり、歯を戻して再び定着するかどうかはその歯根膜が正常に生きているかに大きく左右されます。水道水や消毒液ではその歯根膜が死んでしまうのです。
だから、たとえ砂やゴミが付いていたとしても決して洗わず、歯牙保存液(学校の保健室にだいたいある)や生理食塩水、それもなければ牛乳につけて持って来るだけで良いのです。
歯牙保存液はネットでも売ってますので家の救急箱に常備しておくのも良いと思います。
歯の抜けた高校生は生理食塩水で院長が適切な処理をして、歯を無事に戻す事ができました。
その日の診療後に院長がみんなの前で言った事は『無知のせいで、一本の歯の命が死ぬところだったんだよ』という言葉でした。
それまで別の世界で働き歯科の知識が無かった私に『一本の歯の命』『一本の歯の大切さ』を教えてくれたひと言でした。
それからは、歯が抜けてしまった方から電話があると洗わずに持って来ることを告げて、受付で私がシャーレで必ず受け取る事にしています。そして中に渡す時に生理食塩水につけてと言うのです。
私は常々スタッフに『自分の今付いている患者さんだけじゃなくて、全体を見てだれがどんな治療をしているか見て把握して下さい。どの患者さんがどのステップの治療をしているのか、他のスタッフが何をしているのか把握して下さい。』と言っています。他のスタッフが失敗しそうならフォローをして、せき歯科クリニック全体として見て行こうという事です。
他のスタッフが失敗した時は、自分の事と同じように反省して改善して行って欲しいという願いで言っている事です。
だから、知床遊覧船で『起こるべくして起こった』と周りが言っている事は私にはいまいち腑に落ちないのです。
たぶん遺族なら私以上にそう思っているかもしれません。
そんな事、経営者が考える事、行政が考える事、当事者が考える事、なのかもしれません。
でも、プロならそれ位の責任感を持って仕事にあたって欲しいものです。
なんか歯科とは関係ない話になりましたが、事務長のつぶやきに最後まで付き合って頂きありがとうございました。